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日本再生可能エネルギー総合研究所は、再生可能エネルギー普及のための情報収集と発信を行っています。

リポートReport

 2011.12.25  ドイツに見る固定価格買い取り制度(FIT)の電気料金への影響@
            2012年のドイツの再生可能エネルギー電力の賦課金を検討する
             1か月あたり、1069円、年間1万2823円。
             2011年比較でほとんど変わらず

  ○ 日本の固定価格買い取り制度導入と電気料金への影響

 日本でも再生可能エネルギーによる電力の固定価格買い取り制度が決まりました。
 来年7月からの実施に向けて、現在買い取り価格などの検討が進められています。経産省では来年早々発表したいとしていますが、具体的な検討を行う「調達価格算定委員会」の人選などで早くも批判が続出し、早期の決定を疑問視する声も多く聞かれます。
 消費者サイドから見て最も気になるのは、固定価格買い取り制度による電気料金への影響でしょう。買い取りによる付加分はそのまま料金に上乗せされるのがこの制度です。経産省は、1kWhあたり0.5円程度に抑えたい意向です。この額は、標準的な家庭では一か月あたりおよそ150円、年間1800円になります。(*実はこの標準もいろいろあり議論の余地があります。後ほど、計算にあたっての当研究所としての考え方をまとめます。)

  ○ ドイツの2012年の固定価格買い取り制度の賦課金は、月額1069円

 さて、FIT制度を長年導入しているドイツではどうなっているのでしょう。
 10月半ばに、ドイツでの2012年のFIT制度による賦課金(ドイツ語でEEG-Umlage)が発表されました。金額は、1kWhあたり、3.592ユーロセントです。
 最近の円ユーロレート(1ユーロ=102円、とします。)によると、およそ3.66円になります。これは1か月あたりおよそ1069円、1年間で1万2823円です。
 これは経産省が想定する0.5円の7倍以上の額です。再生可能エネルギー電力の割合の差、ドイツの20%以上(大規模水力を含む)と日本の1%以下、があるとはいえ、かなりの高額な賦課金をドイツ国民は支払っているとも言えます。
 さて、もう少し詳しく見ていきましょう。

  ○ ドイツ再生可能エネルギー電力賦課金の変遷

 ドイツのFIT制度は、再生可能エネルギー法(EEG: Erneuerbare Energien Gesetz)によって決められています。2000年の最初の施行から、2004年、2009年、2012年と3回の改訂が行われ、来年の1月1日から最新のEEGが実施されます。
 FIT制度の初期から2009年までは、FITの賦課金の額も比較的低く、上がり方も緩やかでした。2009年で月額およそ4ユーロ程度(現在のレートで、410円)です。
 ところが、その後急激な上昇を見せます。

表:ドイツの再生可能エネルギー電力賦課金の変遷

kWhあたりの賦課金

月額

(単位:ユーロセント)

(単位:円)

2003

0.41

122

2004

0.58

173

2005

0.68

202

2006

0.88

262

2007

1.02

303

2008

1.12

333

2009

1.13

336

2010

2.047

609

2011

3.530

1,050

2012

3.592

1,069

(ドイツ環境省の資料を基に日本再生可能エネルギー総合研究所が作成)

 表のように、2009年から2010年にかけて一挙に倍になり、さらに今年の2011年には前年の1.5倍に跳ね上がりました。この原因は、まず太陽光発電設備の大幅な価格の下落によって太陽光発電への採算性が格段に上がったこと、つまり、太陽光への投資が「儲かる」ため、建設が飛躍的に増えたというわけです。また、2012年からの新制度で買い取り価格が下がることがわかっているため、駆け込み建設も押し上げ要因となっています。

  ○ 2012年の賦課金は月額プラス19円の増加、ほぼ今年並みに

 新しい再生可能エネルギー法2012では、買い取り価格が全体として下げられました。太陽光発電の買い取り価格は、設備の効率化や価格下落をもとに、ほぼ15%減となりました。たとえばメガソーラーである1000kw以上の施設では、買い取り価格が1kWhあたり、今年の21.56ユーロセント(23円)から、18.33ユーロセント(18.7円)へと減額されています。
 この結果、平均家庭の負担も月額で昨年の1050円から+19円の1069円とほぼ今年並みに落ち着きました。ドイツ政府や関係機関は、これ以上の負担増については神経をとがらせており、胸をなでおろすような報道が行われています

 ○ ドイツの電力料金の内訳

 あまり正確な紹介がされていないのが、電気料金の内訳です。ドイツ国民が他国に比べて高い電気料金を支払っているのは確かに事実です。再生可能エネルギーの割合が高いことがその一因であるのも事実です。しかし、その中身を見てみると、別のことが見えてきます。今回は、再生可能エネルギー賦課金が占める割合のデータだけを残しておきます。(ドイツに見る固定価格買い取り制度(FIT)の電気料金への影響Aにて解説します。

  2010年 賦課金の占める割合  8.5%
  2011年 賦課金の占める割合 13.5%

 注:電気料金などの算出のベース

 ドイツの統計では、原則として標準家庭を3人、年間の電力消費量を3500kWhとしています。日本の場合は、たとえば東京電力では、一か月290kWhの電力消費量、30Aの契約としているようです。
 このため、本研究所では数字を比べやすくするため、基本的に日独とも3,500kWhに統一しています。
 また、ユーロの換算は、現時点で1ユーロ=102円としています。


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