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日本再生可能エネルギー総合研究所は、再生可能エネルギー普及のための情報収集と発信を行っています。

リポートReport

 2012. 1. 24 ニュース特集・・・
            再生エネの特徴が見える2012年年始の欧州発ニュース3連続ピックアップ
            〜解説:再生可能エネルギー電力の不安定性の実際とその対応策
                                    

  ○ 再生エネ電力をどうやって貯蔵するのか。

 ここでは、エネルギー貯蔵技術についての具体例を取り上げます。
 その前に、ちょっとだけおさらいを。
 
 「年末年始の欧州ニュースで、国を越えた送配電ネットが不安定になるなどドイツの再生可能エネルギー電力増加が原因と思われるいくつかの事象が見られた。これらの問題解決のためには、国内だけでなく国家を越えた送電インフラのさらなる充実や、例えば、再生可能エネルギー電力の蓄電システムなどグリッド(送電ネット)に上げる前の段階での調整が必要である。」

 ということでした。

 今週のドイツの国内ニュースでも、巨大電力会社Vattenfallがハンブルグの送電システムのリニューアルの計画を発表したり、EU委員会が欧州内の送電システムの構築を呼び掛けたりと動きが活発です。

   実例:ドイツで進む新しい蓄電システム

 ドイツ北部の町プレンツラウで行われている「ハイブリッド風力プラント」をご紹介します。

  場所:ドイツの首都ベルリンから北に120kmのプレンツラウ
  施設概要:バイオガスプラント 1基
       2メガワット風力発電プラント 3基
       CHPプラント 2基
       電気分解機 1基
  プロジェクト構成企業:
       エネルギー会社 Enertrag(ドイツ)
       石油、ガス会社 Total(フランス)
       電力会社 Vattenfall(スウェーデン)
       エンジニアリング会社 Siemens(ドイツ)
       後援:ドイツ交通省、ドイツの複数の州

 ヨーロッパの錚々たるエネルギー関係の企業がずらりと並んでいます。
 プロジェクトの目的は、まさしく『エネルギー貯蔵技術』の大型実証です。
 
 プラント全体の仕組みは、比較的シンプルです。風力発電の電力で、水を電気分解して水素を製造し、その水素をバイオガスプラントからのバイオガスと混ぜ、コジェネシステムで混焼させて電気と熱に変えます。さらに、水素は燃料電池自動車にも使います。このプロジェクトの目的は、風力発電の効率性を上げることだけでなく、再生可能エネルギーの交通システムへの参入を道づけることにもあるのです。

image via German Institute Taipei)




(Enertrag社のWEBより)

 主要な構成企業のひとつVattenfall社は、イギリスの大規模洋上風力発電所の開発です。さらに、現在ドイツで進められている2つの巨大洋上風力発電プロジェクトでドイツの80万家庭の電力供給を目指しています。この電力貯蔵プロジェクトは、そんな背景の中での企業としての新しいビジネスを目指したものでもあります。
 ドイツVattenfall Innovationのトップであるオリバー・バインマン氏はこう話してプロジェクトの重要性を強調しています。「再生可能エネルギー内での需要と供給のギャップを埋めるシステムは、今のところ存在しない。プロジェクトは我々にシステム内のバランスを教えてくれるだけでなく、我々にビジネスチャンスももたらす。」と。

 プラントは、昨年の秋には完成し12月半ばまで試運転が行われていました。連邦のメルケル首相も期待を表明しているほど注目されています。

 各国のエネルギー貯蔵プロジェクト〜水素利用の革新的プロジェクトが目白押し

 ドイツ国内では、このプレンツラウだけでなく、NRW州ヘルテン、ドイツ北東部のファルケンハーゲンでも水素を使ったエネルギー貯蔵システムの実証が行われています。共に源のエネルギーは風力ですが、水素の使い道が違っています。
 ヘルテン市では、燃料電池メーカーのハイドロジェニックス社が貯蔵した水素をFCによって再び電気に戻すプロジェクトを進めています。一方、電気とガスのエネルギー大企業E-onが取り組むファルケンハーゲンでは、ユニークなことに製造された水素は直接ガスパイプラインに供給され、天然ガスと同じように使われます。

 その他の国の動きも活発です。今年になって2つのプロジェクトが発表されています。ひとつは、ニューヨークのロングアイランドでの風力から水素という同様の流れの実証事業。面白いのはフランスのエネルギー企業アレバ(福島原発の汚染水浄化にプラントを納入した原発関連企業でもある。)が、コルシカ大学と共同で行っているものです。ここでは、風力ではなく太陽光(560kW)の電力で水の電気分解を行っています。すでにシステムは稼働しており、アレバ社も商売っ気たっぷりに期待を高めているようです。
 
 
再生可能エネルギーの進展は、エネルギーの貯蔵システムの確立を強く要求し始めました。今年のトレンドの一つであることは間違いありません

  以上

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